Cashmere in Mongolia

- 究極のカシミアができるまで -

飼育
breeding

 モンゴルのカシミアヤギは海抜1350mもあるモンゴル高原の各地で、日中は写真の様に放牧され、その地に野生する草を食べて育ちます。しかし、気温差が激しく、寒い時には-40℃〜-60℃まで冷え込む厳しい気候風土のため、夜間はテントの中に入れ、寒さ・雨・風・雪から大切なヤギを守りながら飼育されています。

 中国、インド、アフガニスタン、トルコ、イラク、パキスタンなど、 世界各地でカシミアヤギは飼育されていますが、 これ程の高地で飼育され、かつ安定して市場に供給されているカシミアは他に類を見ません。


採取
Kashmir goat

 皆さんはモンゴル産カシミアの原毛を、 どのようにして採取するかご存知でしょうか。

 写真左に見えるのが Kashmir goat(カシミアヤギ)です。 モンゴルのカシミアヤギはその毛色により、 ホワイト・ゴールド・ブラウン・グレイ・ブラックに分けられます。
 モンゴル産カシミアの原毛はカシミアヤギの毛を、 羊の時のようにバリカンで刈り取るのではありません。 その毛の根元に生える、極めて柔らかでこの上も無いヌメリ感を持つ産毛状のもの(左下写真の矢印参照) をくしを使ってすきながら採取するのです。
 この産毛によってできる暖かい空気の層が厳しい寒さから身を守る役目をしています。 ですから、モンゴルのような寒暖の差が激しい土地で育ったヤギほど、 長くて良質なカシミア原毛を提供してくれるのです。

 極上の原毛は一頭につき一度の採取で、100g程度しか取ることができません。例えばこのカシミアを用いて織上げた梳毛地でスーツ(イタリアンサイズ:50)を仕立てた場合、 一着当たり少なくとも
6〜7頭のカシミアヤギが必要になります。
 この事からも、いかにモンゴル産のカシミアが稀少であるかを伺い知ることができます。

cashmere


集荷

Mongolia モンゴル各地で採取された原毛はモンゴル国営工場に集められ精製されます。 国営工場で精製されたカシミアは世界各国の検査基準をいとも簡単に合格し、純度100%の表示が付けられています。
 しかしよりシビアな目で見た時に、問題がない訳ではありません。 カシミアの原毛を工場まで運ぶ際に、通常ポリエステルで編まれた袋を使用しています。この袋が集荷で何度も使われるうちに、微量ながらポリエステルの繊維がカシミアの原毛に混じってしまうのです。精製されるため、純度100%の検査基準には軽々とクリアしていますが、問題は染色にあります。ポリエステルの繊維が染料で着色されないため、 鋭い目を持つ者にとっては、その繊維一本の染めムラでさえ、異様とも言える目立ち方をしてしまうのです。

 SARTORIA YPSILONでは、決してこのような事が起きないように、 熟練した職人によって細心の注意を払って集められたカシミアの原毛だけを用いています。



下準備
preparing

このように細心の注意を払って集められた原毛は、 左写真に見える機械にかけられ、整毛前の下準備として多少のオイルが添加されます。
写真中の矢印は、この機械でオイルが添加され、 次の工程の「整毛」へと運ばれるために輸送待ちをしている原毛です。

 その後この原毛は、天井に取り付けられた大きな通気口のようなダクトに通されて、 整毛されるために隣の整毛工場へと運ばれて行きます。

 この工程でもSARTORIA YPSILONで用いる原毛は、その取り扱いにおいて、 モンゴルの各地区で採取された原毛と混ぜ合されることなどはありません。 勿論、ポリエステル製の集荷袋で集められた原毛などもってのほかです。



製毛
refinement 1

 整毛工場に運ばれた原毛は、 最初大きなローラー(左写真参照)にかけられて梳かれた後、 矢印のように一箇所に集められます。 集められた原毛は別のローラー(左下の写真参照)にかけられ、 再び集められるという工程を数度繰り返されてリファイン(整毛)された後、商品としての原毛が誕生します。

 こうして仕上げられた原毛は、皆さんがご存知のロロ・ピアーナ、 エルメネジルド・ゼニアといった世界有数の紡績メーカーがこぞって買付けていることでも知られています。

 整毛されたモンゴル産カシミアの原毛の太さはおよそ14ミクロン、長さは 単位長あたり長いものでは優に60mmを超え、 短いものでも30mm強、平均50mmの長さを有しています。
 驚くのはその長さばかりではありません。カシミアの命ともいうべきそのヌメリ感は、 他の追随を許さない程素晴らしいのです。綿状にされたモンゴル産カシミア原毛は一見すると、 他のカシミア原毛と区別がつきにくいものの、その風合いは素人が触れても、 明らかに次元の異なるヌメリ感を感じ取ることができるのです。

 SARTORIA YPSILONが扱うカシミアは、こういったカシミアの中でも、 飼育から整毛まで一貫して品質管理されている原毛だけを用いています。 だからこそ、「究極のカシミア」と呼ぶにふさわしいマテリアルなのです。

refinement 2